7.合格後の生き方


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 会計士の2次試験合格後にどんな仕事をするのか、また、その先には何が待ち受けているのかということは、あんまり情報としておおっぴらに流れてくるものではないからってことから、俺の知りうる範囲で論じてみることにしよう。

 

 っていうか、おおっぴらに流れてこないのは、例の「守秘義務」って奴なんだろうかね?どうも俺の見たところ、会計士なり弁護士なりに特有の「プロの義務」だと思ってる奴が多かったりする(もち、年次を経るにしたがって現実を認識してくればこんなことを思ってる奴は減ってくるのだが)。しかしだ、普通の会社に就職したことがある人やバイトをやったことのある人はわかると思うが、労働に関する契約書でも書かせるようなところであれば、この守秘義務って奴が盛り込まれているはずだ。要するに、バイトだろうが正社員だろうが派遣だろうが、普通は守秘義務を課せられているはずだ。

 

 だが、普通の仕事をやってる奴でも、仕事の話なんかを外部の人間にすることもあるだろ?あれと一緒で、会計士だからといって守秘義務を拡大解釈して何もしゃべられない、なんていってりゃあ世話もねえやな。雇われ奴隷が何言ってんだ、って感じがいまだに否めない。確かに公開を目指すような会社の社名なんざ絶対に明かしちゃいけねーが、そんなんは証券会社の公開引受担当なんかとおんなじさ。株屋と一緒にすんな、なんて思ってる方もおられるだろうが、それが現実だからしゃあねえやな。

 

 何を言ってよくて、何を言ってはならないのか、ってことの判別がつかない奴が多いんだろうよ、この業界。ガキみてえなもんだよな。どんな仕事してるのかくらいサクっと本当の守秘義務を守りつつ解説できるようでないと、会計士の仕事なんか認知されねえぜ、いつまでたってもよ。要するに、言っていいことと悪いことの区別をしろ、ってこったあ。

 

 ついでに言っておくと、「高度の人格」とかほざいてる連中もいるらしいな。まあ、冗談の範囲なんだろうがね。監査論もまったく余計なことを勉強させるもんだ。んじゃ「低度の人格」ってのはなんだよ?「ウヘヘヘ・・」とかいいながら女のケツでも追っかけてる変態野郎のことかい?そんな野郎でもガッコのセンコーとかやってるじゃん?普通のリーマン連中の中にもこんな奴は沢山いるぜ。センコーもリーマンも、どっちも「高度の人格」くらいは求められてるってんだ。馬鹿にすんじゃねえ!と俺は言いたいね。ってえことは翻せば、会計士だろうが税理士だろうが、同等の人格を求められているって解釈が成り立つだろ?高度の人格がどの程度か数値で表せない以上、こう考えるしかねえだろ。そしたら、高度ってのは普通でいいじゃん、って話になりゃあしませんかね?あ、そっか。。監査論でも普通でいいって習ったな。ちゃんと覚えておいてくれよ!

 

 さて、前置きが長くなったが、まずは監査とは具体的にどんな仕事なのかってことを考えてみよう。

 

 普通は前述の通り監査法人に就職して監査業務を行うことになるのだと思う。世界中どこでも大体、監査ってもんは科目別に行うことになっている。具体的に把握できる事柄であればあるほど簡単な科目ってことになる。例えば、現金預金とか受取手形とかなんかがいい例だろう。残高の妥当性を確かめるためには実査すればよろしい。また、重要性の低い科目も同様に簡単な科目として新人とか2年目とかの仕事となる。その他の流動資産・負債とか、そういう半ばどーでもいいような科目のことだ。棚卸資産の実在性もまたしかりだ。いわゆる立会って奴だが、これも数えて期間帰属とか見てくれば大体OKな監査要点である。

 

 そんなわけで上の人が滞留債権とか引当金とか見てる間に、せこせこと現金とか数える、というのが最初の仕事となることであろう。小さい会社を何らかの理由で監査する機会があれば、そのときにちょいと、難しい科目も担当することになるはずだから、毎日が現金預金借入金、なーんてことはない。多くはないだろうが、全部オメーがやってこい、なんてこともありうるので、そういうのが好きな人は期待に胸を膨らましておいていいだろう。(俺は嫌いなんだけどね、そういうのはさ。)

 

 金融機関に勤めていた人に多いのだが、札を数えるときに扇形に開いて5枚ずつ勘定する、なんて芸当ができると仕事が早く終わってしまい、そのため余計な仕事が回ってくる恐れがある。余計なことをしたくないときは、「いーち、にー、さーん、しー」と声と指で確認しながら、一枚一枚丁寧に数えよう。そうそう、自動車免許の教習所とかでやる、発進前の指先確認と一緒だ。まあ、こんなことやってると仕事が出来ない奴というレッテルが貼られることウケアイだが、そんなことをいちいち気にしていては、ただの家畜になりかねないので注意が必要だ。家畜希望の方はこの限りではない。

 

 また、何かと言われる話として、調書運搬があるが、これは新人の仕事と完全に決まっている。会計士以外の数年程度のキャリアとかほとんど評価しない監査法人においては、新人にはひ弱そうだろうが骨が折れそうだろうが年食ってようが、この仕事が回ってくるはずだ。ただ、女性の場合、ダンプ松本ばりの奴でもこの作業は免除されるので、筋肉を鍛えておく必要はない。

 

 しかし、いずれにしても、はっきりいって人間が持てないほどの荷物を持たされることはないので安心すべきであろう。たまに人間の力がどれくらいあるのかをご存じない先生も見受けられるが(ケンカした経験とかねえのかね)、そのときは荷物運搬用のトランクの取っ手をへし折って、運ぶことができないことをアピールしよう。常識からいえばこんな事態になればタクシーでも使うもんだが、「担げ」とかいう常識外の先生がいたとしたら、荷物を落とすフリをしながら頭上から荷物をソイツの頭にぶち当てるのも一興だろう。裁判すれば勝てるはずなので、是非やってみることをお勧めする。まあ、こんな感じで、仕事を楽しくするためには手段を厭わないことをアピールしても、手出しするような奴はいねえから安心してよい。っていうか、手出しするのは俺くらいしかいねえはずだから心配はご無用だ。。

 

 あと、残業の話だが、一日16時間くらい仕事に関わっている体力を身につけておけば大丈夫だ。合格直後からその訓練をしておくとよい。家畜云々の話に矛盾するようだが、残業してるときこそ、いろいろ勉強になることを上の方がおっしゃってくれるケースが多いから、残業には積極的に参加しよう。業界の裏話などもこのときに聞けるケースが多い。

 

 残業しても残業代が出ない、などと嘆いているケースもあるかもしれない。残業代は実際にやった時間の半分くらいは出してくれるはずだ。ちなみに俺とか俺の同僚のケースを平均してみると、最低、残業時間の60%くらいは残業代の申請ができる雰囲気だ。クライアントからオフィスに戻る時間は計算されないため、どうしてもこのくらいになっちまう。残業単価は最初2,400円程度であるため、1時間1,300円くらいのバイトをしていると思えば、そんなに苦にはならないのではないだろうか?他のバイトをしようと思っても、なかなかそこまでくれるバイトはねえだろー?それでも不満な方は、監査法人勤務者を対象とした労働組合を作るべし、だ。多分、業界から総スカンを食らうだろうが、もちろん、呼びかけさえあれば、俺も参加させてもらうぜ。

 

 休みについてであるが、12月決算と3月決算のクライアントがある場合、普通の企業で取れる休みが取れるくらいだと考えてよい。正月付近とか、7月~8月くらいには休みが取りやすい雰囲気になっているところが多いが、その時期に12月決算の会社は棚卸とか何とか、いろいろ入ってくるため、1週間くらいの休みを取れるだけにとどまることが予想される。はみ出している人は強引に3週間くらい休みを取るケースもあるので、ここは是非みんなこぞってはみ出してみることをお勧めする。休みなんか遠慮してたら、従順な綿羊になっちまう。まあ、プロとしての自覚激しき家畜の方々には綿羊になってもらい、あとで存分に毛でも刈らせてもらおう。

 

 大体もって、プロとか言ってるが、普通のリーマンと一緒で会計士補なんざ所詮は「セミプロ」に過ぎない。セミプロならセミプロなりに生活するということを忘れるべからずだ。時間当たりなんぼで働いているってこととかを認識しない限りは、この業界の労働環境は劣悪なまま行っちまうぜ!?俺から言わしてもらえば、「勘弁してくれ。」って感じだな。外ヅラとしては「プロです。」っていっときゃいいだけでさ。この辺はバイト経験豊富なみなさんも十分に理解できるところだと思う。

 

 長々と文句を書いてしまったが、つまるところは、「普通のリーマン並みにちゃんと働いてくれ。」ってこったあ。学生アガリの会計士補だとこの辺があいまいになっちまって、言いなりになってる場合とか、あるいはその逆で全然仕事しねえなんてのもあるからさ!そういうの見てると気の毒になってくるよ。普通に命令を聞いて、普通に実行して、普通に権利を主張しようぜ、ということだ。

 

 とまあ、グダグダ書いちまったが、次に合格後どんな道があるのかを検討してみよう。

 


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2000.9.19