6-1.合格発表後の過ごし方


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 さて、就職活動も何とか適当にこなして楽しんできたのであるが、ここでふと我が身を振り返ってみよう。そう、まだ合格は確定していないのだ。だがここでは合格したものと仮定して、合格発表を迎えた後の過ごし方について少々論じてみよう。

 

 発表当日数日前というのは随分と緊張してくるようだ。この緊張を楽しめる奴もいれば、そうでない奴もいる。俺は前者に属するのだが、この上ないほど緊張感を楽しんでいた。なんつっても、こんなのは高校受験のときも大学受験のときも味わったことはない。なんでかっつーと、同じ中学で同じ高校を、あるいは同じ高校で同じ大学の同じ学部を受けてた仲のいい奴なんざ、全然いなかったからなんだ。バイトは発表の数日前に終えて、後はバイト代を当てにしながら遊びまくるのだ。特に同じ立場にある受験生とは、かなり似たような雰囲気を共有することになるので、集まって遊ぶなり何なりと、せっかくの機会なので充分に堪能すべきだ。

 

 発表前日ともなると、俺の場合はもうお祭り騒ぎだ。一人で盛り上がっていたような記憶がある。年に1回、しかもものの5分もあれば終わるお祭りなんだが、楽しくもあり不安でもありだ。そうだなぁ、小学校の運動会前日みたいな感じだったぜ。

 

 こんな風に発表直前時期を楽しんでおいて、いざ合格のときを迎えることになるが、ここからが結構忙しくなってくる。なにしろいままでモンゴル草原の風来坊のような野郎だったのに、これからはチンギスハーンの配下に入ってこき使われる、みたいなことになるからである。発表当日には大抵、各監査法人では合格慰労パーティーみたいなもんが催されるんだが、入所確認を兼ねているので行かなければならないってんだから、普通考えたらかなり面倒だ。しかし、ここは合格したという安心感をバネに知らぬ間に行ってしまうことになる。

 

 そんなのは大抵午後に2時間くらいのもんだから、早々に切り上げて家に帰るなり、友人との合格パーティーとシャレこむなり、人それぞれに喜びのときを過ごす。うれしくて眠れないくらいの夜を過ごしておいた方が後々悔いがないであろう。ここで下手にクールになってもつまらん。一緒に遊ぶ相手がみんな落ちてしまっていた場合は誰でもいいから誘って遊びに行こう。彼女等がいる場合は、二人でゆっくりと高級な飯でも食ってみるのも一つの手である。したがって、この日のために使う金は充分に準備しておくことが望ましい。俺の場合、この日だけで3万くらい使ってしまったものだ。女性の場合は当然のことながら、超高級な店にでも彼氏に連れて行ってもらうように要請しよう。

 

 翌日の夜には専門学校の合格祝賀会などもある。知ってる人がいようがいまいが、また、お世話になった学校だろうがそうでなかろうが、勝手に行って飯を食ってくることをお勧めする。極貧生活に慣れきっている元受験生にとっては、とんでもないご馳走にありつくチャンスだ。ただほど高いものはないといわれるが、高いものをただで食ってやろうという意気込みが大切だ。さもないと後で後悔することになっちまう。そう、専門学校に払った授業料もここで少々回収することができるからさ。ビンゴ大会とかやる場合もあるので、本試験前同様、運気を整えておくことも考慮しておく必要がある。

 

 とまあ、合格後のお祭り騒ぎはこの辺でエンドだ。ここからは補習所の入所手続、会計士補の登録手続、そして法人の人事関係手続なんていうのが目白押しだ。休みの間に実家に帰るとかするとしても、2、3日のことだ。翌週の火曜日とか水曜日くらいにはもう普通のリーマン生活となるから、この時点で金はなかったが楽しかった自由人生活ともおさらばだと考えておくのが妥当だろう。

 

 しかし、ここで注意すべきことは、自由人生活が続けられる人もいるということである。例えば、自分が3回受験する予定で人生プログラムを組んでいたのにも関わらず2回で受かってしまったとしよう。焦って監査法人に入るという選択肢もあるが、半年くらいパートでバイトして(一応監査概要書に名前が載るようにしておく=証取法監査をやっておくことに留意する。んでないと3年後に3次試験を受けることができなくなってしまう。)金をため、残りの半年で世界一周旅行でも堪能してくるという手もある。俺の試算によれば、家賃が1ヶ月3万ほどのところに住んで、1ヶ月25万くらいの手取り(1ヶ月15日くらい働けばこのくらいは何とかもらえる。週休3日は確実だ。)をもらっていれば、6ヶ月で100万円くらい貯めることが可能であり、半年間チープな海外旅行くらいはできる。

 

 もちろん、この場合、序列社会で生きようとしているのならば、1年実務を経験したことにしてもらえるよう、パート先のオヤジに頼んでおくことも必要だ。年次が一年違うと、随分と待遇も異なる世界なので、そういう配慮はしてしかるべきだ。もっとも、はみ出し受験生からはみ出し会計士を目指すみなさんにとっては、年次の1年やら2年くらい便所虫みたいなもんだから、そういう配慮は必要ないってわけだ。監査法人には3次試験合格までしかない、そのあとはビジネス社会に討って出る、なんていう覚悟のある人も同様である。ただし、生活する金もない俺みたいな奴はとりあえず3次試験合格までこの手を温存しておこう。

 

 話を本線に戻しておこう。合格発表後の翌週の金曜日くらいには補習所の入所式ってのがある。これもただで飲み食いできるはずなので一応出席しておこう。もっとも出席しなくても何の障害もないので、心配する必要はない。あと、登録も順調に済ましておくことをお勧めする。1ヶ月に2~3日くらいしかやってないので、この機会を逃すと翌月、仕事をしているときにバックレて登録をしに行かねばならないことになってしまう。こんなくだらねえことで有給休暇を使うことは避けておこう。もっとも、有給休暇を法人の言いなりになって全く取らない奴はこの限りではない。むしろこの機会に取っておくことをお勧めする。

 

 このようにして仕事が始まっていくのであるが、冷静に考えてみよう。みなさんが最初に働き始める月というのは11月である。3月決算の会社であれば、半期報告書作りが華やかな季節でもある。あれよあれよという間に補習所なんか行けなくなるほど忙しくなることも十分に考えられる。最後の自由なひとときを満喫するよう努力を惜しまないように気をつけておこう。

 


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2000.9.19