.インチキ就職活動


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 論文式試験が終わると今度は受験生の方々は就職活動ってのをやらなきゃなんねえ。これがまた面倒だったんだから、世の中どうかしちまってるんじゃないか、なんか思ってしまうね。

 

 面倒だ、ってのはよく事情もしらねえままやっちゃうと面倒だってことだ。大体さ、試験の翌日にある就職説明会なんてのがあったりして、普通寝てるだろってな感じだ。もちろん、専門学校とかでも何日か後に就職説明会なるものをやってるので、そちらを利用する手もある。だが、ここではやっぱり普通にやってちゃ面白くない。異常な方法を採用することにしよう。

 

 試験が終わったその日は朝まで遊んでるもんだろ。いくら疲れてたってこの日くらいは遊ばなきゃならん。社会人受験生の方々は翌日から仕事があるんだろうが、ここは高熱でも出したことにして遊んでしまおう。どうせ金曜日なんだからこの日を休めば土日も休みっていう寸法だ!んでもって、朝までおなかいっぱい遊んだ後は、すぐに就職説明会に出向こう。無精ひげが生えてようがスーツじゃなかろうがそんなこたあ関係ない。入り口で会計士協会のオッサンが待ってるから、その人に資料だけくれ、って言うと快く応じてくれる。っていうか、たまに「あんた受かる気なさそうだね。まあ無駄だと思うけど持ってって。」なんていうアホなイヤミっぽいオヤジもいるが、そこは明るく「そうですね!全然受かる気しないんだけど、せめて資料くらいは見ておきたくてもらいに来ました!」なんて言っとくとスムーズに事が運ぶことだろう。

 

 この資料ってのがほとんどすべてだ。説明会では法人の人が次から次と出てきては10分くらい宣伝していくっていう方式をとる。だから、そんな大した特ダネもないし、聞いてても眠いだけだ。こんなことに時間を使うくらいならば家でゆっくりと休むことにしようぜ。資料の中には説明会の概要とか法人のパンフなんかが入っている。これをもとに就職先を検討してみよう。っていうか、どのみち大手に行くか中小に行くかくらいしか判断基準はないと考えたほうがよい。大手監査法人に入りやすければ、そっちに決めてしまおう。現在のところ4つほどしかないが、どこも似たり寄ったりなので考えるほどのこともないと思われる。法人が開催する就職説明会に出てから決めても遅くはないが、4つのうち、せめて2つくらいに絞ったほうが後々面倒じゃなくて済む。

 

 まあ、無論大手監査法人間にも少々の違いはあるが、俺的には外資が入ってようが純然たる日本企業だろうが、そんなもんは屁にもなんねえ。また、給料が5万高いか安いか、なんてのはたいしたことはない。もちろん、忙しいのに給料が安いというのは問題だけどな!それは事前にいくら調べてもたいした情報は入ってこないし、配属先によってもエライ違いがあるってんだから、気にしてるだけバカってわけだ。ひまなところならば、適当にバイトでもしてりゃあ、気分転換にもなるし金も増えるし平衡感覚も失わずに済んだりするもんだ。かくいう俺も暇なときはバイトに入ることもある。日給8千円くらいでも楽しい仕事ならば文句はねえだろ。

 

 さて、就職活動のことに話を戻そう。俺の場合で申し訳ないのだが、俺は就職活動中もバイトをやってたんで、時間を取るのは難しかったんだ。せいぜい2つの法人にしか行けない。しかも、いっちょまえに内定辞退するときは出向かねばならないところもある。電話で済むところもあるんだが、都心から遠いところに住む者にとってはこれほど面倒なことはない。沢山内定を取ってもあんまりいいこともないわけだから、予め絞っておいたほうがいいってわけだ。まあ、俺は電話かけて、辞退するときは内定証を持参して来て下さい、なんて言われても、「そっちも仕事なんだろうが、こっちも仕事してんだ。絶対にいけねー!」とか何とか言ってさ、んじゃいいです、ってところまで粘れば何とかなる。アッチさんも忙しいからそんな馬鹿野郎にいつまでも付き合っていられねえんだろ。せいぜい仮にあったとしても、人事担当者に悪い印象を与えるくらいのもんで、将来に影響することはまずない。人事担当の社員かなんかが変わってしまえば、仮にその法人に今度行きたいと思ったらすんなり行けるってこった。まあ、よほど手間暇惜しまなければきちんと断った方がよいのは言うまでもない。

 

 就職活動といっても、今のところ監査法人では人不足の状態にあるため、面接の準備なんかはほとんど必要ない。下手をするとスーツきていかなくてもよいのかもしれない。ましてや人格判断テストの練習とか数学の勉強とか一般常識とか、そんなもんは全く不要だ。面接の達人なんか読んだところで何の役にもたたねえ。単なる金と時間の無駄だ。志望動機くらいを考えておけばよいだろう。それ以上やっても何の利益もないばかりか、時間の無駄となってしまう。志望動機などは、適当にパンフでも見比べて特徴的な部分を言ってあげよう。あるいはそこで実際に働いている人づてに聞いた話があればそれを言ってあげると喜ばれる。特に就職説明会のときのビデオやらプレゼンテーションやらの資料から引用すると、人事担当者も「ああ、俺たちの作った資料も役に立ったか!」なんて思い上がりながら、せっせとその旨調書にまとめることであろう。

 

 面接は通常2、3回で終わる。この辺も一般の就職活動よりは楽だ。しかも変なツッコミはほとんどないから安心してよいだろう。採用活動は非常にお粗末なもんだから適当にやっちまおう。履歴書などに大学名を書くんだが、それも別に卒業証明書など準備する必要がない場合が多い。職歴などは調査していないようなので、大げさに書くか、それともだらしなく書くか、とにかく面白おかしく書いてみることをお勧めする。ここらへんはいいことを書いても悪いことを書いても、即座に給料に反映することないようだ。安心して吹きまくろう。それが原因で将来の給与が上がらない、とかそういうことはないし、あったとしたらやめちまえばよいだけなので、何ら問題はないと考えられる。

 

 ここまで監査法人の就職について述べてきたが、監査法人以外の会社に就職を希望している方も多いと思われる。監査法人以外では、会計士補を対象にした採用活動は一部のコンサルティング会社や会計事務所を除けば定型的なものがない。したがって、独自に中途採用の人材募集をしているところを探す必要がある。しかし、ご承知のとおり、現在普通の業界は凍っている状態にあるため、採用もかなり慎重であるから、合格を前提にして内定をくれ、などといってもハナで笑われるのがオチだろう。合格発表後に動くざるを得ないと思われる。ここでは合格しているのとそうでないのとでは天と地の差があるものと思っていたほうがよい。また、就職活動も厳しいものとなることが予想されるため、会社研究や自己の性格分析など普通の就職活動と同様の対策が必要である。経験のない会計士補なんか、クソみたいなもんだから給料も叩かれて、随分と引っ込んじまうはずだ。

 

 一応アドバイスをしておくが、会計士の資格を生かしたいと思ったら、やはり監査法人ないしそれに付属しているコンサルティング会社などで3、4年くらいは働く覚悟をした方がよい。一般企業に就職すると補習所の費用が出なかったり、実務経験の証明がもらえなかったりして、3次試験を受けることもままならなくなる場合がある。俺の知ってる人でも監査法人でもコンサルでもないところで働いてた奴がいたが、補習所やら登録やらの金は一切出なかったらしい。

 

 つまるところ、監査法人というところは、給料はそんなに出ないかも知れないが、やり方次第では非常に楽に過ごすことも可能なので、しばらくぬるま湯で生活してみるというのもオツなものと思われる。どうせやめるんだからと思って働いていると非常に気楽なもんである。また、それなりに勉強も出来るはずなので、独立を目指したりしたい人にはお勧めだ。

 

 独立といえば、2次試験合格後いきなり独立する、ということも十分に考えてよいだろう。もちろん、監査法人にパートかなんかで入って、気楽に仕事をして、自分の事務所を形だけでも整える、という程度のもんだが、パートでも1日3万円くらいもらえるところもある。1ヶ月に15日くらい仕事するだけでも十分に生活は立ち行くことだろうから、残りは遊んですごすもよし、自分で仕事を探すもよし、である。本格的に就職したくない人向けのモラトリアムとしても十分だろう。監査法人でパートやってれば、3次試験の受験資格も十分に備わる。補習所の費用を自分で払うことに我慢さえすればなかなか魅力的な選択肢ではないかと思われる。実際に、そのような方法で仕事をして、隔週週休4日制とシャレこんでいる人もいるらしい。学生のうちに受かった人などは、学校さえ暇であれば、同じような方法でお小遣いを稼ぐことも可能だ。

 

 というわけで、結論としては、会計士の就職活動なんてのはバリバリのキャリアでもない限り、焦ってやってもしょうがないものなのである。合格発表までの期間は、受かってるとすれば、嵐の前の静けさのようなもんなので、自由な生活を謳歌しよう!

 

 


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2000.8.16