インチキ会計士の Vacation

 

長期休暇はいつ取れるのか?

 

 資金市場や債券、そして資産・負債の分類のように、休暇もやはり分類が可能である。休暇には長期と短期が存在している。ここでは長期休暇について取り扱うこととしたいので、そのつもりで読んでくれよな!特に監査法人というところは給料も高くねえし、人使いも荒いし、福利厚生なんかゾウリムシのベン毛ほどしかねえ。おまけにヘンな奴が寄り集まってる集団である。長期休暇がなければとっくの昔に組織は崩壊していると言われている(と俺が思っているだけだが…)。

 

 そんな中で、監査法人もようやく労務管理の重要性に気づいてきたようで、今後は徐々に長期な休暇を取ることもできなくなってくるはずだ。しかし、そんな近い未来のことではない。多分、5年から10年かけてこれから徐々に変わっていくと俺は見ている。だから、しばらくは長期休暇が取れやすい環境が続く。以下に書かれるようなこともしばらくは出来るってわけだ。監査法人なんか見たことねえ、って人向けにちょっとだけ監査法人における休暇についてご紹介したい。

 

長期休暇の定義とは?

 

 長期休暇といっても、人それぞれ、職種により会社により個人により、その定義は異なるというのが俺の考えである。まずは定義をはっきりさせることが必要である。少なくとも俺が言う長期休暇は、2週間なければならない。つまり、土日を入れて16連休は最低要件である。一般的には1週間連続で休暇を取れればそれを長期休暇というらしい。だが、俺は1週間じゃ何もできないのである。もっと長く、こう、仕事とは何たるかを忘れさせてくれるくらいの期間が欲しい。それが16日間なのだ。半月も休めば十分にリフレッシュされるはずである。

 

 この世の中にはよく「リフレッシュ休暇」なる呼び名の休暇制度が存在する。しかし、様々な会社の制度を見てみると、1週間連続の休みを超えない程度である。これでどこがリフレッシュされるのか、俺ははなはだ疑問に感じる。1週間の休みが長期なのだと感じるのもこれはまた非常に幸せなことなのだが、ずっと家で寝ていられる人ならばともかく、どっか遊びに行ったり、普段出来ないような趣味に昂じたりする人にとっては、物足りないはずだ。俺の場合、例えば旅行に行けば、いろいろな情報を入手してくるので、帰ってきた翌日から即仕事なんかしたくねえ!資料の整理とか旅行の経験に基づいて何か行動を取るというのが、旅行の計画をしているときについで楽しいものである。

 

 しかも、日本の慣習に基づくお正月、お盆なんてときにみんなと同じような行動を取るような休みは、はっきりいっていらねえ。ましてや、GWをば!である。正月とお盆とGWはどこにいったって混むし、旅行に行くにも料金が高いんだ。みなさんもよーくわかっているはずである。したがって、俺の言う「長期休暇」はいわゆる混雑時期を外せる休みである、と定義しておくのがよいだろう。

 

監査法人では長期休暇が取れるのはいつ?

 

 お客さんのとこでよくこんな質問を受ける。何度かその質問の真意を聞いてみた。

「またまたぁ!休みかなり取れるんでしょー?ウチの会社に来てるとき以外はほとんど休みなんじゃないのー?」

 

 これはとんでもない誤解だ。他にも多数の会社に邪魔させてもらってるのだ!別にアンタのとこだけで仕事が完結するんじゃねー!!と言いたいところだが、監査法人なんてところは守秘義務違反に気を使いすぎるせいか、休みのことも喋ってはいけない、などというバカオヤジまでいる組織として名高いので、あまり大きなことは言えないのが残念なところである。

 

 「守秘義務」というのが監査法人の職員、ことに会計士の先生方にとっては非常に大切なものであるらしい。守秘義務研究において著名な研究家の俺としては、一つ書いておきたいことがある。確かに公認会計士法では守秘義務違反に刑事罰が課せられている。ヘタに刑罰を受けると資格剥奪の憂き目にあるのは理解できる。かといって、なんでもかんでも喋ってはいけないということではないことくらい、冷静なみなさんはよく分かっていることだろう。つまりはこういうことである。「バカほど守秘義務にうるさい」─これは古今東西普遍の原理であろう。コートジボアールであろうが、アイスランドであろうが同じであるはずだ。

 つまり、バカは喋っていいことと喋っていけないことの区別ができねえんだ。アタマはヘンなところに使ってるようでもあり少々かわいそうになることもしばしばである。だから、コチコチに監査法人の習慣に凝り固まった連中はいざ知らず、これから会計士を目指す方々、または会計士になりたての先生の方々は自分の頭で考えて行動しよう。でないと、ナチス(今の日本もだが)の役人みたいにつまらん人間になりかねない。注意が必要だ。

 守秘義務オヤジについて述べたが、この種のオヤジは意外なところで守秘義務違反をしている例を俺は何度も目撃している。例えば、行きつけのスナック等でそこのオバちゃんやオネーちゃんに平気で仕事の話をしている。こんなアホオヤジが沢山いることについて、会計士協会そしてご当局に対策を練ってもらう必要がありそうだ。

 

 そんなこんなで会計士の休日については意外に知られていないのが実情である。会計士の休暇について興味がないから知られていないという見解をもたれる方も多かろうが、ここは話のアヤというもので、人間として生きていく上では人の話を聞いてあげるということも重要なので、我慢して読み進んでもらいたい。

 

 そこで監査法人ではいつ休暇が取りやすいのかという問題点が浮上する。いや、浮上という行為は潜水艦等に限らず不測の事態により行われるするのであるから、話がつながんねーというような意見はここでは捨象させてもらおう。

 

 監査法人においては、主に夏休みと冬休みがある。どうだ?学校みてーなところだろ。というのも、3月決算の会社が多く、ついで12月決算の会社が多いことが原因だ。よく勘違いされるのだが、俺らは決算作業中に会社に邪魔させてもらうことはそんなに多くない。そんな忙しい時に会社に邪魔すると、大抵ウザがられ、会社の女の子たちにも嫌われるばかりか、合コンなど誘おうものなら、すぐ法人に通報されてしまい、担当会社を変えられるのがオチである。監査というよりも、決算概況の聴取や決算政策などの相談ごとなんかが多いが、そんなものは速攻で終わる。誰も心配してないだろうが、心配がご無用である。

 

 したがって、例えば、3月決算の会社に決算間際の3月下旬などに行くのは少々キツイものがある。監査という仕事が本格化するのは大体4月中旬くらいから、つまり会社の方でも決算数値がはっきりしてくる時期に当たる。よく誤解を招くのだが、1社だけ担当してるわけではなく、一人当たり10~20社くらいの会社をプライオリティをつけながら決算監査を行うから、この作業はしばらく終わらない。監査報告書を提出までの間、ベストを尽くして監査を行うという、会計士の先生方にしては意外に忙しい日々なのである。

 

 会計士の先生方、という表現が非常にイヤラシイと感じる方々に対して少々説明をしておく。会計士というのはどうやら先生と呼ばれるものであるであるらしい。旧来型の会社に行くと、会計士の呼び方が二通りに分かれる。

 旧来型の会社とは何かついて、ここではクドクド述べないが、大体想像できるであろう。「旧来型だとー?!ウチの会社のどこが旧来型なんだ?オマエの脳味噌が旧来型なんじゃねーのか!!」とお怒りの方もいらっしゃるかもしれないが、そういうあなたにしても、「ハイミスのイヤミなオバハンと聞いて何らかの女性をイメージしてしまうだろうから、それとあまり変わりはないので、別に他意はない。とにかく、旧来型の会社の人が会計士に接触する場合、「先生」と呼ぶ会社もあれば、「○○くん」「◎◎さん」と呼ぶ会社もある。これは諸先輩先生方がその会社の方々にどのように接していたのかを示す歴史的資料でもある。十分に検討する価値のある資料である。

 また、世の中に先生と呼ばれる職業はかなりあるが、その先生方にも序列が存在することに、俺は気が付いたのである。どういうことに気づいたのかというと、次のようなものである。

 「先生」の代表的なものとして、医者、弁護士、国会議員、学校教諭、茶道・お花などの師範、そして時代劇でよく見かける浪人兼用心棒といった職業が挙げられる。会計士の先生方が仕事でこの方々と接触するときは、相手を「先生」と呼ぶ。果たしてほとんどの場合、相手は会計士の先生方を「先生」とは呼ばないのである。つまり、同じ先生の中でも序列が存在し、しかも会計士の先生方は全く最下層に属するというべきであろう。

 ちなみに、先生と呼ばれる方のなかには、いかがわしい経営コンサルタントもいらっしゃるが、彼らが会計士の先生方に接触する場合、相手は先生と呼んでくれるので、いかがわしい経営コンサルタントよりは序列が上なのかもしれないと感じた経験がある。

 そんなわけなので、判官びいきの俺はネット上ではせめて会計士の先生方を「先生」と呼んで差し上げたいのである。といっても、俺のことだからどうせ皮肉たっぷりにそう呼んでいるのであろう、と勘ぐることは特に異常なことではないことをお断りしておく。

 

 よって、3月決算の会社の場合は4~6月、12月決算の場合は1~3月がいわゆる繁忙期である。中間監査、挙句の果てには何をトチ狂ったか四半期決算なんつーのもあるが、これは主として上場会社、そして英語とかフランス語とかを用いて決算したりするので少々ムカつく外資系企業だけであるから、商法上の大会社の監査はなく、比較的楽である。しかし、中間監査といえどもその監査集中期間に長期休暇を取ると、同じ監査法人の上司・同僚をはじめ、部下や事務方のねーちゃんたち、果てはチンカスにまで白眼視されることがほぼ確実であると見込まれるため、このような行動を取る者はごく少数、っていうか、いないと判断してよい。いるとしたら、追放処分になったり、俺みたいにヘンな部署に送り込まれることとなる。さらに、俺よりも悲惨な例で恐縮だが、狂ったような長時間勤務を行うことを業としているコンサル系の関連会社へ、

●エクセル/ワード/ロータス/パナワード・タイピスト、

●プリンター・アウトプット・ウェイター、

●カット&ペースト・アーティスト、

●シュレッダー=ペーパー=バッグ・ウェイスティング・マネージャー

などといった職名を得て永久出向、トナー=エクスチェンジング&コピー=マシーン=リペアリング・ディヴィジョンに配属され、そして給与差額補填なし、なんてことにもなりかねず、人間として自重するという行為がいかに重要なことであるか、人生における悲哀とはなんであるか、そして人類にとって愛とはなんとかけがいのないものであるか等、様々な事柄について深く思い知ることとなる。

 

 話を元に戻すと、結果として、1月中旬~6月下旬、8月~12月中旬といったところが繁忙期ということになる。逆に言うと、それ以外の時期についてはさほど忙しくないので、スケジュールさえ合えば勝手に休んでも差し支えないのである。少なくとも俺の中では、12月下旬~1月中旬、6月下旬~8月中旬は休みを取れる時期といえよう。

 


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2003.2.20

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