インチキ会計士の 三次試験落ち方講座!!

 

9. 口述試験に関するアドバイス

 

 最後の三次試験を受験する先生方に、大変僭越なことであるのだが、一応、経験者として俺から一つアドバイスをさせていただきたい。

 

 俺が今まで聞いた話の中で、口述試験で面白いことをやったという話は一度も聞いたことがない。かくいう俺も、当時は忙しく、全く考える余裕がなかった等の理由により、大変残念なことであるが、面白いことは何も出来ずじまいであった。最後の三次試験、そして最後の口述試験ということで、今までに例のないことをやってみるというのは、非常に価値があることだと思うわけである。

 

 口述試験で番号を呼ばれて監査実務の受験会場に入ると、受験番号を言う必要があるわけだが、前述したように、突然地べたに這いつくばってお祈りを開始したりするのも、口述試験史上初の快挙である可能性が高い。初というだけではなく、空前絶後である。

 

 会計士の先生方に聞いてみると、どうやら口述試験というのは廃止になる方向で現在検討が進められているようなので、もはや口述試験で偉い先生方と相対することはなくなってしまう。これは非常に残念であると思う人には、偉い先生に、最後の口述試験会場において、その必要性を理解させるためにも、さまざまな方法により主張していくことが大切である。

 

 法的な観点から言えば、幸運なことに、我が国では信教の自由は憲法で保証されている。したがって、試験の前に、這いつくばってお祈りしたとしても、試験の結果になんら影響しないはずである。仮に影響させた場合には、信教の自由を害されたとして、行政裁判に持ち込み、精神的苦痛の対価等、何かと得るものも多いかもしれない。

 

 スポーツ界を眺めてみよう。現にサッカーなどにおいても、試合開始の前にはイスラム教徒は、その教義にしたがってお祈りをしているが、これをFIFAが咎めたという話は聞いたことがない。また、ボクシングなどにおいても、試合開始前にお祈りをすることは全く問題になったことがないのである。

 

 これは日本の会計士の試験なのであるから、日本社会に受け入れられない方法で受験すると落とされるのではないかという心配をする方もいることであろう。しかし、日本の会計士といえども、世界に向けて活躍の場を広げるべきであることは、試験実施当局も、また、会計士の先生方の団体である日本公認会計士協会も異論を持たない部分である。日本にいて少し奇異な目で見られるからといって、自らの信教を曲げる必要は全くない。

 

 そこで皆さんの中にも、多分いるであろうイスラム教徒、あるいは、口述試験の前日にイスラム教に改宗する予定のある方々には、是非、試験会場でのお祈りを実践してほしいと思っている。

 

 イスラム教はどうしても好きでないとか、舶来モノは苦手であるという方には、日本古来の宗教であるシャーマニズムで臨んでいただきたい。残念ながら現存する資料によれば、せいぜい卑弥呼くらいまでしか遡ることが出来ない。おそらく、試験会場に入室した瞬間、突然クルクル回りだし、目をひん剥いたりしながら、

 

「私は必ずうかーる。うかーーーる。うかるのじゃーーーー、ウーーーン!」

 

とか言いながら地べたに倒れ込む、というのが通常考えられる流れである。倒れた後は試験委員らが起こしてくれるので、それから、彼らの質問に丁寧に答えていくこととなろう。本来ならば、白い鉢巻みたいなのを巻いて、そこにろうそくを二本くらい、火を付けておくべきなのであろうが、試験会場では火気厳禁となっていると思われるので、そこまではできないであろう。

 

 俺は、この宗教について余り関心がないため、正確な知識がないのが残念なところである。これは日本古来の伝統的な宗教であるから、どうしても舶来モノは生理的に受け付けないという方々は、おそらくこれについて正確な知識をお持ちであろうと思う。そこで、その儀式次第、具体的なところを早めに俺宛にメールで知らせてほしい。その次第を当ウェブサイトに掲載させていただき、日本の伝統文化を守るお手伝いをする所存であるので、よろしくお願いする。

 

 加えて、この場合においては、イスラム教系のお祈りと異なり、日本の古来からの伝統的宗教であることから、日本の会計士試験にそぐわないという理由で不合格にさせられることは、まずありえない。もしあったとしたら、まずは東京都知事等、このことを理解してくれそうな方に事の次第を伝えれば、きっと力になってくれるものと俺は期待している。

 

 いうまでもないことであるが、旧日本海軍将校の格好(なぜか参謀のモール付)で口述試験を受験した場合も同様の措置を講ずれば事足りる。ただし、軍刀は持ち込み不可と考えられるため、竹光にするなどの措置を考慮に入れた上で実行してほしい。なお、シャアと同じ服を着て同じ帽子等を着用する場合には、いくらシャアが日本の伝統だと言い張っても偉い方々の擁護は期待できないため、独力で解決する覚悟が不可欠である。

 

 全般的な注意点としては、このような行為を行う場合には、録音装置を持っていくことをお勧めする。試験委員とのやり取りの中で、自分が正解を述べていることを証拠付けるためである。そうでなければ、試験委員等に裁判で「こいつは間違った答えを言ったから不合格にしたのだ!」ということを言われる可能性があるのだ。これは何としても避けねばならない。このためには、小型のデジタル・ボイス・レコーダを購入すると良い。口述試験の試験時間はせいぜい30分程度である。市販のレコーダは最低でも8時間ほどの録音が可能なので、これで十分である。

 

 最後に重要な注意点を一つ述べておくこととする。上記いずれの行為を行うにしても、口述試験で十分に合格するくらいの力量を持つために勉強をしておく必要があるということである。そうでないと、宗教差別により不合格になったのか、それとも単に不合格になっただけなのかの区別が出来ず、このような行為を実行する意味がなくなってしまうからである。

 

 言い訳がましいことは重々承知の上で書くのであるが、俺は落ちる可能性が十分にあったため、上記の理由から、このような行為を口述試験で行わなかったのは適切な判断であったと考えている。

 

 あと、俺は、宗教家、コスプレ・マニアやアニメ・オタクなどではなく、したがって、宗教やコスプレに関する話題を振られても、残念ながら応じることができかねることをあらかじめお断りしておく。では、皆様のご検討をお祈りする。

 

2006.1.15 (完)

 

 

 最後の最後に、合格後の話を少々しておく。

 二次試験のときもそうだったと思うが、住民票や戸籍謄本、身元保証書、写真等、準備しておくべきものが沢山ある。そして何を考えているのかよくわからんが、それらを発表日から10日間ほどの間に準備しなければならない。もう少し便利にならんものかと思うのだが、市役所にいったり、本籍地が遠い場合には郵送で戸籍謄本を依頼したり、法務局へ行かねばならなかったり、登録のための書類の準備には結構かかる。

 公認会計士協会の登録検討会みたいなのってのは、1ヶ月に一度しか行われないので、ここで遅れると登録が一ヶ月遅れることになる。しかも、次の締め切りは繁忙期の真っ最中(5月初めくらい)で、なかなかこの時期に書類を揃えて提出するのは大変であろう。

 また、落とし穴としては、協会登録の住所などが、引越し等の理由で現在のものと異なっている場合である。引越しの他、転職したとか、市町村合併で住所・本籍が変わってしまったといったものまで含まれる。これらをあるべき姿にしておかないと、登録が出来ないという仕組みになっているので、非常に面倒だ。

 公認会計士登録をしないで頑張るなど、色々面白い裏技もあるので、ご留意願いたい。登録しないで放置しておいても、法的には何の問題もないし、監査法人としても、給与をあげなくて済むので、本人さえ良ければ、そんなに問題にならないのではなかろうか。「会計士補兼公認会計士となる資格を有する者」でも、別に暫くは勤まるんじゃねえの?

 これは監査法人以外に転職している人に対してであるが、会計士補の登録は、現段階(記載日現在)では、公認会計士協会への入会が条件にはなっていない。つまり、会費を払わなくても会計士補でいることができるということだ。一方で、公認会計士登録をすると、強制的に協会への絶対忠誠を誓う(要するに入会して会費を払わねばならない)ことになるから注意した方が良い。入会しない場合は、「公認会計士となる資格を有する者」ということになる。

 つーか、もう、こういう制度はなしにして、公認会計士登録は協会への入会と切り離した方がいいと思うのだが。せいぜい、CPEとJICPAジャーナルの購読分だけの金をとるくらいにしてさ。会費は年10,000円くらいでよくねー?会費が足りないなら、日本在住のUSCPAかなんかも入会させて会費とりゃあいいじゃん?

 まあ、いずれにしても合格してからの話であるので、別にどうでもいいことなのかもしれない。しかし、合格後は書類準備で忙しいということに注意しておくべきであろう。


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2006.1.15