[あいかーるの小部屋]

【2KB小話】

中島みゆき

昨年の紅白歌合戦では中島みゆきが出るってんで、俺もあわててみることにした。俺も同じ北海道出身だというだけでもなくて、昔からあの暗い歌が結構好きだったのだ。トーンが暗い割には、俺にとっては明るい場面が脳裏に浮かぶのが彼女の歌である。

俺って一応71年生まれなんだが、10歳くらいのときに初めて覚えた中島みゆきの歌は「悪女」って歌だった。俺は快晴の天気のように何も考えないハナタレ小僧だったため、歌詞を覚えたはいいが、意味がさっぱりわからん。それでも、元気に口ずさんでいるという、無邪気な美少年(って自分で言ってりゃ世話ねえな)だったわけだ。

歌詞は今考えてみると恐ろしい。女友達に男のいるフリしてネタ切れしてホテルのロビーにたたずんだり、男と映画館行ってるフリしたり、挙句の果てには裸足で夜明けの電車に乗って涙流して泣いているってんだから、とんでもねえ女を歌った歌である。でも、一方でそんな女もかわいげが少しあるな、などと思うようになったのは俺もオヤジ化しつつあるって証拠なのかもしれない。

「悪女」って歌は今もってカラオケで歌えるほど、よーく覚えている。というか、歌い方が似ている、とオヤジたちにホメられたこともあったなぁ。俺は猿真似が得意なようで、同じように小学生の頃よく耳に入ってきた松山千春(そう、今は単なるハゲオヤジだが当時はスーパースターだったのだ)の歌も得意だぜ?

同じように懐かしさと若いときの元気さを思い起こして、オヤジたちは紅白を見たんだろうか。プロジェクトXの主題歌だしなー、アレ。俺はよく死にそうなマネージャーに「明日死んでたりしたらプロジェクトXの題材になりますねー!『そして、彼は死んだ。早すぎる死だった。』とかナレーションが入って中島みゆきの歌が…」なんていうと大抵ひんしゅくを買ったものだ。

2003.2.28 Karl5 Production